練習時の苦い気持ちを胸に出番を待っていた保育園のお遊戯会。
本番目前、搬入順に楽器を並べながら緊張を押さえつけていた吹奏楽コンクール。
アーティストの荷物を預かり祈るような気持ちで後ろ姿を見送ったライブ。
ぴん、と張りつめて、呼吸が浅くなって、普段は味わうことのない感覚。
視線の先には、目が眩むような強い光の中に、憧れ、孤独、恐怖がぐるぐる渦巻くステージがある。
これが私にとっての「舞台袖」での記憶。
これらを呼び起こし、未だ体験したことのない風景を見せてくれた、
木村和平さんの写真展「袖幕」に行ってきました。
木村さんが実家で見つけた、ある1枚の写真をキッカケに、
2013年からプライベートでバレエ発表会を撮影。
膨大なカットの中からセレクトされているそうです。
木村さんの作品はこの展示が初めて。
先の通り、自分にとって舞台上やそれを袖から見るという行為は、どちらかと言えば苦手なものでした。
自分は本番に強い!と言えるひとはそんなに多くないと思うけれど、
私もやはり緊張しいで、結果はだいたい晴れやかなものではなかったから。
けれど、木村さんの目線で切り取った作品たちには、
緊張の中に頬が緩むようなやさしさがありました。
本番前のそわそわした空気。
床にぺたりと座って、様子を伺うように舞台上を見つめる小さなバレリーナたち。
舞台上に駆けていく子の背中。
そんな瞬間瞬間が、やわらかい光と空気を含んで写し出されている。
遠い昔の映画のワンシーンを見ているような気持ち。
個人的に好きだったのは、はっきりと濃く映る袖幕や柱の間から、
舞台上の子供たちだけが軽やかに踊る様子が切り取られた一枚。
そのコントラストが面白く、印象的でした。
2019年7月7日(日)まで、福島県いわき市小名浜のALAYAさんにて開催中。
お洋服たちの間から覗くと、袖幕からの風景のようでした。